コラム
Column

モノづくり工場の創意工夫

コラム『モノづくり工場の創意工夫(5)』

パナソニック ファクトリーソリューションズ株式会社(以下「PFSC」)の幸前です。

さて、『モノづくり工場の創意工夫』第5回目の投稿です。


モノづくり工場において、多品種少量生産で低コストを実現するには『モノづくり基盤力』と『資材生産在庫管理力』の更なる強化が必須であると述べてきました。

前回までのコラムを前提とし、今回、モノづくりの進化への歯止めと位置づけられる『標準作業』の創意工夫にスポットを当てます。尚、所々に表れる専門用語の定義については割愛します。ご容赦下さい。


標準作業とは、人(Man)・モノ(Material)・設備(Machine)を有効に組み合わせ、良い品物を・安く・タイミング良く・環境に配慮し・安全につくるための仕事のやり方(Method)を決めたもの、すなわち、標準作業管理の徹底により、インプット・プロセスのバラツキを排除、最高のアウトプットを獲得する事が可能になります。

しかしながら、インプット・プロセスのバラツキ、また、無駄な・価値を生まない動作で、膨大なロスを被っている工場も散見されます。
※ここが重要、良いアウトプットは、良いインプット・プロセスで生まれる。『プロセス』にこそ価値があり、それは、市販されていません。

補足ですが、製造LTにおいて、1円の価値も生まない停滞時間と運搬時間が約95%を占めており、残り約5%の加工・組立・検査において、価値を生む動作は、約1.5%に過ぎないと言われています。


そこで、標準作業の創意工夫の紹介です。 (下記1.~3.)

1.標準作業3要素(原理原則)
    価値ある動作を生み出している工場は、標準作業の3要素である『タクトタイム』『作業手順』『標準手持ち』の原理原則に基づいたモノづくりをされています。特に、『標準手持ち』がポイントで、設備内にあるモノも含め、必要最少限の仕掛数を設定し、潜在的課題の顕在化を図っております。
    ※ここが重要、『標準作業3要素』を正しく理解・運用しないと、様々な問題が発生し、作業が乱れ、アウトプットや品質のバラツキを誘発します。

2.標準作業3点セット(管理)
    標準作業3要素の原理原則を前提に、標準作業3点セット『工程別能力表』『標準作業組み合わせ票』『標準作業票』で標準作業管理を徹底されています。標準作業を進化し続けるには、作業手順・時間の経過が容易に判断できる『標準作業組み合わせ票』が必須、それは、価値を生まない動作の抽出を可能にします。
    ※これまでのコラムにおいても、再三にわたり述べてきましたが、標準作業3点セットのベースであり、モノづくりの原単位である『タクトタイム』を高精度・高鮮度(タイムリー)、かつ、人の手を介さずに管理できる仕組みを構築することが重要です。

3.MRDS(改善)
    絶え間ない継続的な改善取り組みが標準作業の進化をもたらします。進化されている工場は、動作経済の法則に基づく『MRDS』の4原則を活用し、改善取り組みを継続されています。

    周知ですが、ご参考までに、MRDSの定義を共有します。
    M:動作の距離を短くする
    R:動作を楽にする
    D:動作を同時にする
    S:動作の数を少なくする

    また、作業の流れや工具の持ち替え、および、ワークの回転・反転回数等の極少化に向け、『動作の順序を入れ替える』を原則に組み入れ、『MRDS+J』の5原則で改善を推進されている工場も見受けられます。
    ※改善の継続取り組みには、前提として、前に述べました『原理原則の共通認識』および『管理の見える化』が必須です。また、作業者には、『動機付け』⇒『体験の蓄積』⇒『結果のフィードバック』のプロセスが欠かせません。


創意工夫の紹介を通じ、標準作業の進化には、日本生工技研殿の作業動作分析ソフト『タイムプリズム』の活用が有効です。
    □作業分析を通じた価値ある有効動作(価値を生む動作)率の算出・管理
    □作業編成の平準化、および、比較検証(2画面動画再生)による作業の高位平準化
    □標準作業組み合わせ票の自動作成
等々、『タイムプリズム』の有効活用により、標準作業の更なる進化が狙えます。


以上、モノづくりの進化への歯止めが標準作業です。原理原則に基づいた標準作業管理のプロセスを高速回転する、それが、更なる高収益工場に導いてくれると考えます。


次回、第6回目の投稿が最終の予定です。第1回~第5回の総括を予定しております。


尚、コラムは、パナソニック株式会社 及び PFSCの見解を示すものではありません。日々のモノづくり工場のコンサルティング業務を通じ、小生が実感していることを自由に描いたものであります。
JIET

執筆者プロフィール

職務履歴と現職

松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)入社以来、国内外モノづくり工場のシステムインテグレーターとモノづくり力強化コンサルティングを担い、顧客独自のモノづくりプロセスの構築に貢献。現状においても、各種資格・手法と約200社(約5000人)のコンサルティング経験を活かし、人財育成・組織力向上を考慮した経営力・モノづくり力強化コンサルティングを担う。

得意分野
モノづくりマネジメント全般

(5S、見える化、工程設計、生産管理、品質管理、作業管理、コスト管理 等々)

コミュニケーションスキル全般

(傾聴、質問力、問題解決力、伝える力、リーダーシップ、自己分析 等々)

保有資格

産業カウンセラー、TOCーICO国際認定、FP技能士(AFP)、JQAセルフアセッサー、品質管理検定 等々