コラム
Column

モノづくり工場の創意工夫

コラム『モノづくり工場の創意工夫(3)』

パナソニック ファクトリーソリューションズ株式会社(以下「PFSC」)の幸前です。

さて、『モノづくり工場の創意工夫』第3回目の投稿です。


前回のコラムの通り、モノづくり工場において、多品種少量生産で低コストを実現するには、『モノづくり基盤力』と『資材生産在庫管理力』の更なる強化と進化が必須です。

今回、前回の『5S』に続き、もう一つのモノづくり基盤力である『見える化』の創意工夫にスポットを当てます。
余談ですが、人間の5感の情報収集比率は、『視覚83%』、聴覚11%、触覚3%、味覚2%、嗅覚1%です。視覚を通じて収集している情報が多いと言えます。
尚、所々に表れる専門用語の定義については割愛します。ご容赦下さい。


誰もが承知の見える化、しかし、情報共有のみの『見えた化』工場が散見されます。
真の価値ある見える化を実践されている工場は、見えたものから『一心行動』で進化し続け、5S同様、『Q・C・Dの定量的な効果』を獲得されています。
多品種少量生産において、『共通のモノサシ』で『正常異常の判断』を素早くし、『自主的な問題解決』を導く『見える化』は必須と言えるでしょう。


そこで、真の価値ある見える化への創意工夫の紹介です。 (下記1.~5.)

1.共通認識
継続的に価値を生み出している工場は、『比喩』を上手く使い、かつ、自らの言葉で繰り返し伝え、定義の『共通認識』を図っておられます。
[比喩を使った見える化の定義(例)]
車を運転中、後方から救急車が接近、その情報(サイレン)で、認識(道を譲る)し、行動(道路脇に停車)する。
※ここが重要、見える化とは、『一心行動』すること、情報共有ではない!

2.ガラス張り(透明性)
『見せたくない、知られたくないモノ・コト』ほど情報共有されておられます。
第三者が見学にくると隠しモノ・コトをする等、逃げ腰の見える化は禁物です。
『高い志』をもって工場内の一等地で資材仕損の見える化を行い、年間数千万円の効果を獲得された例もあります。

3.魅せる道具立てと実績管理の仕組み
数字羅列より『グラフ化』、白黒より『カラー化』、2Dより『3D化』等、一心行動に向け、魅了する道具立ての工夫をされています。
また、実績管理は、設備からの自動収集等、 『人が介在しない』仕組みを構築されています。現場の負担増は禁物です。
『魅せる』生産進捗管理の道具立ての導入のみにより、15%以上のアウトプット向上を獲得された例もあります。
※ITには意思はありません。意思疎通には『アナログ管理』も必要となります。

4.真因の追究
見えたモノ・コトから、いかに一心行動に移せるか?が困難を極めます。
その打破に向け、日々、『継続的会合』をもって真因を追究し続けておられます。
しかしながら、その真因は、部門の壁や旧態依然としたルール等に及ぶことも多く、内部での制約解除は困難、『第三者サポート』を要請されているのが実状です。

5.定期的なチェック
PDCAの高速回転には、明確かつ判定可能な目標に基づき、その達成手段を実行する事が前提ですが、その目標と結果を比較・評価する『チェック』が機能しているか否かが重要です。
※高付加価値を生み出している工場の共通点、それは、『経営トップ』が見える化を牽引している!と言えます。


創意工夫の紹介を通じ、真の価値ある見える化を推進するには、日本生工技研殿の作業動作分析ソフト『タイムプリズム』の活用が有効です。
時間は動作の影と言われ、無駄な(価値を生まない)動作を『有効動作率』でチェックすることも可能です。
※製造LT内において、停滞時間と運搬時間が95%を占め、残りの5%の殆どが補助動作であり、価値を生み出す動作は約1.5%と言われております。


以上、見える化は、単なる手法やツールではなく、自ら問題を発見、能動的に解決する『仕事のやり方や習慣そのもの』の見直しであると言えるでしょう。
第2回目コラムの『5S』、及び、今回の『見える化』の真の価値ある取り組み、それが、更なる高収益工場に導いてくれると実感しております。


第4回目の投稿は、2~3ヵ月後の予定です。

尚、コラムは、パナソニック株式会社 及び PFSCの見解を示すものではありません。
日々のモノづくり工場のコンサルティング業務を通じ、小生が実感していることを自由に描いたものであります。
JIET

執筆者プロフィール

職務履歴と現職

松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)入社以来、国内外モノづくり工場のシステムインテグレーターとモノづくり力強化コンサルティングを担い、顧客独自のモノづくりプロセスの構築に貢献。現状においても、各種資格・手法と約200社(約5000人)のコンサルティング経験を活かし、人財育成・組織力向上を考慮した経営力・モノづくり力強化コンサルティングを担う。

得意分野
モノづくりマネジメント全般

(5S、見える化、工程設計、生産管理、品質管理、作業管理、コスト管理 等々)

コミュニケーションスキル全般

(傾聴、質問力、問題解決力、伝える力、リーダーシップ、自己分析 等々)

保有資格

産業カウンセラー、TOCーICO国際認定、FP技能士(AFP)、JQAセルフアセッサー、品質管理検定 等々